ヘルシンオアまではコペンハーゲン中央駅から鉄道で向かう。ちなみにヘルシンオアは英語でElsinoreで、劇中の地名と全く同じだ。自転車も載せられる入口の大きな電車に揺られ、郊外の穏やかな風景が車窓を流れていく。ウトウトしていると、小一時間程でヘルシンオアに到着した。
街はコペンハーゲンがあるシェラン島の東端にあり、海峡を挟んだ向かいはもうスウェーデン。
空は快晴なのに街に人影は少なく、鏡の中の無人の世界に入り込んだかのような気分になる。風はまだ肌を射す冷たさだが、海と空はどこまでも青く、北欧の遅い春の到来を告げている。
城の陸側は大きな堀に囲まれていて、城壁は厚くて堅牢だ。建物はいわゆる古城に比べると窓が大きく、比較的近代的なデザインに見える。外観からは豪奢さは感じられず、一言で言うと質実剛健な印象だ。
城は17世紀前半に一度焼け落ちているが、その時唯一無事だったのが礼拝堂だった。華麗な装飾が残され、金色を多用していてロシア正教の影響を感じさせる様式は独特で美しい。
城は20世紀初頭までデンマーク軍の司令部として使用されていたため、城の内部には礼拝堂を除いてあまり昔の面影は残っていない。数少ない天井画や大広間は西欧の城砦建築に比べると控え目だが、木がふんだんに使われていて北欧らしいスタイリッシュさがある。北欧のモダンデザインの源流は、意外と古くからあるのかもしれない。
屋上から城と街を望む。
ヘルシンオアからスウェーデンに向かうフェリーと、こちらに帰ってくるフェリーがすれ違う。対岸はすぐそこだ。
かつては海峡を通過する船からの通行税の徴収の拠点でもあった。
コペンハーゲン週末旅行記:クロンボー城