クロンボー城からコペンハーゲンに戻り、Oesterport駅で下車して人魚姫像とカステレット要塞へ向かう。
町の中心部からは少し離れた閑静なエリアで、駅前にはすぐにカステレット城砦の堀と緑が広がり、堀に面して整然としたタウンハウスが立ち並ぶ。昨日と打って変わって空は晴れ、まだ肌寒いものの春らしい陽気になった。
カステレット要塞は五芒星の形をした城砦で、商都コペンハーゲンの防衛のために17世紀に建設された。かつては数多くの大砲が並んでいたが、現在では緑に覆われた土塁と堀があるだけで、砦というよりは公園だ。敷地内にはいわゆる城砦建築はなく、聖アルバニ教会等の平和的な古い建物が残る。
芝生の上では若者たちが昼寝をし、シルバー世代の夫婦達が土塁の上を散歩している。長閑で寛いだ雰囲気の場所で、特にScenicな建物があるわけではないが、晴れた日にボーっとしに来るにはいい所だろう。
人魚姫の像は、カステレット要塞のすぐ近くの海岸沿いにあった。
あまり人の多くないコペンハーゲンだが、さすがにここの前には記念撮影の人だかりが出来ている。
周知の通り、人魚姫像はかの有名な世界三大がっかりスポットの一つであり、確かに期待を裏切らないガッカリ度だった。像自体の小ささもさることながら、周りの岩場や海はお世辞にも綺麗とは言えず、背景の対岸の島には煙突と工場が立ち並ぶ。せめて背景が水平線だったら、これほどガッカリと言われることもないのだろうが・・・
アマリエンボー(Amalienborg)は、どこかの甘えん坊将軍のような名前だが、歴としたデンマーク王室の宮殿。ちなみにクロンボーもアマリエンボーも、「ボー(borg)」はデンマーク語で城の意味なので、「クロンボー城」などは典型的な重複表現である。
アマリエンボーの建築様式はロココ調で、外観は西欧の宮殿建築とさほど変わらず、ロンドンのバッキンガム宮殿を小さくして柵を無くした感じである。なぜバッキンガムを思い出しかというと、ここの衛兵たちも黒いフサフサの帽子を被っているからだ。制服の色はスカンジナビアンな青で若干違うが、割とそっくりである。
フサフサの帽子の中身がどうなっているか気になるところだが、上のEurostarの広告のようになっていないことを祈るばかりである。
アマリエンボーのすぐ北にはフレデリクス教会、別名Marble Churchがある。
建物全体の大きさに対してドームが巨大で、まるで上半分だけ切り取ったようなアンバランスなプロポーション。人間で言えば4頭身くらいか。それはそれとして、内部はなかなか荘厳で美しい。展望台は人気スポットらしいが、閉まりかけていたので退散。
ニューハウン(Nyhavn)はコペンハーゲンで最も絵になる一画だろう。ガイドブック等でもコペンハーゲンと言えばここの写真が使われることも多い。湾につながる細長い水路にヨットが停泊し、水路に面してカラフルな建物が並び、美しくヨーロッパ的な町並みだ。ちなみに水路は一見運河のように見えるが袋小路になっていて、細長い埠頭と呼ぶのが正確。
通りには隙間無くレストランやカフェが並び、どこも地元民と観光客で賑わっている。
カフェに入りカールスバーグを頼み、美しい家並とヨットを眺めていると、やっぱりヨーロッパはいいとしみじみ思えてくる。全く中南米とか中東とかアジアばかり行ってる場合ではない。
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ホテルに戻り昼寝した後、夕食を予約したレストランへ向かう。
中央駅の南西の地域に店はあるのだが、人通りは少なく、町並みは殺伐としていて、あまり治安の良くなさそうな一帯だ。とはいえ、コペンハーゲンはそれほど治安が悪い都市ではない(はず)なので、あまり気にせず歩いていく。
予約したKødbyens Fiskebarは倉庫外のような一画にあった。
ここも繁盛している店で、テーブルはほぼ満席。ここの売りであるシーフードはどれも美味。
円塔(The Round Tower)はその名の通り円柱形の塔で、17世紀に天文観測のために建設されたものらしい。火薬庫や武器庫ではなく、天文所というのがなんだか平和的。古い建物なのだが、煉瓦造りのせいか、ドイツあたりの貯水塔をイメージさせる外観。
普通の塔と異なり、中は階段ではなく急な螺旋状の勾配になっている。
おそらく重い機器などを運搬したからだろう。入り口さえクリアすれば、軽自動車くらいなら登って行けそうな広さである。しかし歩いて上るのは意外と大変。
展望台からコペンハーゲンの眺める街並み。
意外とオレンジ色の屋根が多く、風力発電の風車がどこかシュールだ。
コペンハーゲンはオランダ並みに自転車が多い。
後ろの竜のシッポのような尖塔を持つ建物は、かつて証券取引所だった。それにしてもクールな尖塔である。当時のバンカー達もきっと自分達のオフィスをクールだと思っていたのだろう。
運河沿いに建つデンマーク王立図書館の新館は別名「ブラックダイアモンド」と呼ばれ、近代的なデザインで有名。世界的にみても図書館は有名建築が多いが、オフィスビルに比べて設計の自由度が高く、そもそも建設が経済合理性を目的としないからだろう。もっともこの新館はごく普通の近代建築とでもいうか、それほど印象には残らなかった。
図書館前の運河ではカヤックがいたり、和んでる人々がいたり。
穏やかな時間が流れている。
夜、Nimb Brasserieでのディナー(割と美味)の後、少し飲みに行きたくなって店員にお勧めを聞いみると、「上の階にあるうちのバーは素晴らしい」と言うので、素直に行ってみることにした。
Nimb Barは、果たして店員のお勧めのとおり非常に素晴らしかった。多分これまで訪れた数多くのバーの中でも最高の店のひとつではないかと思う。
店内は天井が高くて体育館のように広く、ゴージャスな夜景はないし、歴史的・クラシカルな建物というわけでもなくのに、不思議と魅力的な空間だった。私達以外の客はほとんどいなくて、とても静かで親密な雰囲気。インテリアのデザインは控えめながらもセンスは非の打ち所が無く、飲物やサービスも完璧だった。
きっとこれがNYや東京にあったら"ヒップな"連中で一杯で、この静謐な空気も台無しになるのだろう。ある意味コペンハーゲンという都市でのみ成立する美しさなのかもしれない。ちなみに昼間に来ると大分雰囲気が違いそうなので、夜に来るべき。
翌朝NYへの帰国便に乗る。
やはりヨーロッパ(そしてコペンは)素晴らしい。試験前のいいリフレッシュになった。
コペンハーゲン旅行記:カステレット要塞、魚姫像、アマリエンボー、フレデリクス教会、ニューハウン