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救世主の国
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San Salvador, El Salvador

Spring Breakの旅行は、中米の未訪国を巡ることにした。
訪れるのはエルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカそしてパナマの5カ国。
パナマは運河やサンブラス諸島があるものの、他の国は地味で正直それほど関心もなかったが、半ばスタンプラリー的に、半ば巡礼のように訪れることを自らに課す事にした。まあ、行けば意外と面白いかもしれないし、それに日本に帰った後ではまず行く機会はないだろう。



例によってマイアミを経由してサン・サルバドルに入り、飛行機と陸路で5カ国を回ってパナマシティから帰るルート。
特に大きな期待感もない、ある意味気楽な旅行だ。



古ぼけた、何の変哲も無いサン・サルバドルの空港に降り立つと、ムッとする熱気が全身を浸す。
空港から街への沿道は、これまた特徴のない郊外の街並が続く。米系のチェーン店が多く、まるでカラオケ屋と中古車屋とパチンコ屋と巨大モールに占拠された、日本の田舎の国道を走っているかのような錯覚を覚える。
明らかに中米のそれなのだが、不思議なほど土地の固有性を感じさせない風景だ。


宿は、Morrison Hotel de la Escaronという安めのホテルにした。
Tripadvisorのサン・サルバドルのホテルの中では何故か2位なのだが、普通にボロく安宿的な風情なのに、受付や他のスタッフは感じがよく、どこか高評価も納得してしまう。



他の中米の国の例に漏れず、サン・サルバドルも治安は悪く、家々の塀の上には有刺鉄線が張り巡らされている。
翌日のホンジュラス行きのバスの切符を買いにバスターミナルに行ったとき、散弾銃を持った警備員の写真を撮らせてもらう(バスターミナルの敷地も高い塀と鉄条網で囲われている)。銀行やATMはもちろん、少しでも金が集まる所には必ずセキュリティがいる。それだけ襲撃が現実的な危険なのだろう。



タクシーで街の中心にあるバリオス広場に向かう。道の両脇には数百の露店が軒を連ね、どこかアジア的な雑踏だ。
広場に面した国立宮殿前の歩道には、何をするでもなく中年の男たちが大勢座り込んでいる。何かを待っているのか、失業中なのか、いわゆる野良人か。いずれにせよ、ユルめの空気である。



広場の周辺はコロニアルな建物とアジア的な露天が混然一体となった、混沌とした一帯だ。
小ぎれいさは微塵もないが活気があり、濃密な生活の臭いがある。






先日死んだばかりのチャベスを追悼するポスターが、オスカ・ロメロとともに早くも露天に並んでいる。
左傾化と反米化が進む中米では、他国の元首であってもチャベスは人気があるのかもしれない。


広場にあるCathedral Metropolitanaは、ひどくあっさりした外観の聖堂だ。
古い写真を見ると、以前はファサードのアーチを囲うオレンジ色の装飾があったようだが、歴史のどこかで失われてしまったのだろう。



身廊から翼廊に入ると、美しいステンドグラスを背景にした祭壇に人々が熱心に祈りを捧げている。
残照が、白壁にステンドグラスの色鮮やかな影を投げる。
そういえば、ここは救世主の国の、聖なる救世主の街なのだ。

中南米旅行記/エルサルバドル旅行記/サンサルバドル観光