Swazi Cultural Village, Swaziland |
スワジランド2日目はエズルウィニでのんびりと過ごすことにした。
朝から頭を空にしてテラスでビールを飲み、色鮮やかな緑と熱せられた空気に包まれていると、時の歩みがいつしか緩み、旅の途上で体に積もった緊張や感情のささくれがゆっくりと解けていくのが感じられる。
処刑岩は眩いばかりの日差しを受けて白っぽく光っている。
◆◆◆
午後、折角だからどこか一つくらいは観光しようとネットで調べてみる。
エズルウィニ渓谷にはスワジ王室の宮殿があるロバンバ、スワジ文化について展示している国立博物館、前国王にちなんだソブーザ2世公園、「スワジランドの日光江戸村」ことスワジ文化村(Swazi Cultural Village)などの観光地がある。
スワジの王政について。
スワジランドは形式的には立憲君主制だが、実質的に国王が統治権を掌握する絶対君主制である。
具体的には、2005年スワジランド憲法上、行政権(64条)と立法権(106条)が国王に帰属し、各大臣の任免は国王が行い、内閣は国王の諮問機関に過ぎず(65条)、国王は立法に大して完全な同意権を持つ(108条)。司法権は一応独立しているものとされているが(138乃至140条)、どのみち最高裁・高裁判事の任命権は国王にある(153条)ので同じである。また国王は軍隊・警察等の指揮権を持つ(4条)。
現代では絶対君主制はアラビア半島とブルネイ等の産油国にしか残っていないし、おそらくアフリカでは唯一だろう。
それにしてもスワジ憲法、憲法とは思えないような詳細な規定ばかりで長すぎである。
そんなスワジ王室だが、代々ドラミニ家(House of Dlamini)が王位を承継してきており(1903年~1968年のイギリス統治時代は王ではなく大酋長(Paramount Chief)とされた)、1986年以降は現国王ムスワティ3世が統治している。そしてこのムスワティ3世は評判がすこぶる悪く、Naverでまとめが作られているくらいである。なにしろ厳しい財政状態にもかかわらず散財を尽し(小国なのに王室専用機まである)、素行も悪く、内政問題には無為無策で、国民の評価は最悪らしい。
部外者としては散財くらいだったら虐殺・内戦を繰り返した過去のアフリカの独裁者(アミン、モブツ、ボカサの三大暴君やドエ、ンゲマ等挙げればキリがない)に比べるとマシじゃないかと思ってしまうが、国民としてはたまったものではないのだろう。
部外者としては散財くらいだったら虐殺・内戦を繰り返した過去のアフリカの独裁者(アミン、モブツ、ボカサの三大暴君やドエ、ンゲマ等挙げればキリがない)に比べるとマシじゃないかと思ってしまうが、国民としてはたまったものではないのだろう。
・・・などということを考えた結果、折角天気もいいし、伝統的ダンスも見られるらしいし、ホテルから唯一歩いて行ける距離なので(これが最大の理由)、スワジ文化村に行ってみることにした。
スワジ文化村はマンテンガ自然保護区(Mantenga Nature Reserve)の中にあり、ホテルから処刑岩の方に埃っぽい赤土の坂道をたどって2~30分ほど。日差しが強く、風もないので茹だるように暑く、道半ばにして汗でびしょ濡れになった。自然保護区の入口のゲートで一休みしたら、後もう少し。
「スワジの日光江戸村」と言っても別にアトラクションがあるわけではなく、木の枝を束ねた垣根に囲まれた敷地には、イヌイットのイグルーのような半球形の住居が並んでいるばかり。
ウロウロしていると、鮮やかな民族衣装を纏ったガイドが来て色々案内してくれた。
昼下がりの最も暑い時間帯だったせいか観光客は他に全くいなかった。
民族衣装を着たキャストたちも食事をしたりタバコを吸ったりして完全に休憩モード。
キャストたちの食事風景。
普通に伝統的な食器を使って食べてる。
傍らではヒヒの子供もバナナの皮を食べてた。
ガイドに連れられて家々を覗いていく。
適当そうに見えて各家の配置や序列、機能は明確に決められていて、家を囲む垣根の横線の本数は一族内における地位や立場を表わすらしい。竪穴式のように柱で支えられているわけではなく、巨大な帽子のような形状なので、そのまま持って移動することもできるとのこと。
低い入口から背を屈めて中に入ると、外の炎熱が嘘のように涼しい。思ったよりも天井が高く、快適な空間だ。
30分もするとあらかた見終わってしまったが、今日のハイライトであるダンスショーにはまだまだ時間があったので、少し奥に入ったところにあるマンテンガ滝を見にいくことにした。
今回の旅ではマーチソン・フォールズ、シャマレルの滝に次ぐ3本目である(そしてこの後は久々のビクトリアの滝も控えている)。滝づくしである。
誰もいない林の道を抜けて水辺に降りると、遠くに二筋の滝が落ちているのが見えた。あまり近づけない上に決して迫力があるとはいえないが、この暑さの中では涼しげなマイナスイオンを供給してくれるだけでもありがたい。
滝から戻ってきてもまだ時間が余っていたので、公園内のレストランでビールを飲んでぼんやりとして過ごす。
スワジランド製のSibebeビールは無難な味だが、暑い中を歩いた後なので劇ウマであった。時間が余りすぎていたせいで立て続けに6本も飲んで店員に呆れられたが、ダンスを見るときはほろ酔いくらいのテンションの方がいいに決まってる。
時間になったのでダンスの会場に行くと、まさかの観客は私一人である。
それでもプロフェッショナルであるキャスト達は、若干やる気なさげながらも粛々と踊り始める。
自分ひとりのために大勢のキャスト達が目の前で踊ってくれているので最初は恐縮しきりだったが、次第にダンスそのものの迫力に引き込まれていった。それになぜか男たちが手首・上腕とふくらはぎにフワッフワのファーをまとっており、どう見てもカットされたトイプードルにしか見えない件。
男たちは棒を持って歌いながら、体のバネを存分に活かしたワイルドなダンスを披露していく。女たちの方はどちらかというと歌メインでダンスのアクションはそれほどでもないが、歌声は朗々と見事に響く。打楽器のリズムと歌、ダンスが調和して期待以上の完成度で、かなり楽しかった。
結局相当長居してしまい、夕暮れ頃にホテルに戻った。
暮れてゆく空に浮かぶ処刑岩のシルエットを眺めながら夕食。
明日はモザンビークに移動するのでスワジランドは2日間だけだったが、とても居心地のいい滞在だった。全くレソトと大違いである。
スワジランド旅行記:エズルウィニ、スワジ文化村