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意外と快適なスワジランド
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Nyonyane Mountain, Swaziland

スワジランドは南アフリカとモザンビークに囲まれた内陸国で、レソトやモロッコと並ぶアフリカの数少ない現役の王国でもある。ちょっとしたサファリができる国立公園の他はこれと言った有名な観光地があるわけではないが、南アからのレジャー客をあてこんだカジノやゴルフ場が多く、南ア人にとっては避暑地的な位置付けなのかもしれない。

ヨハネスブルグを出たミニバンは快調に高速を走り、国境もつつがなく通過して6時間ほどで首都のムババネに到着した。ムババネ。弾力と粘着力を兼ね備えた名前である。


弾力と粘着力を兼ね備えた名前を持つムババネは10分も歩けば市街地を通り抜けてしまいそうな小さな町だ。HIVの啓蒙ポスターとKFCの看板が目立つ以外はこれといった特徴はないが、南アに近いのでアフリカとしては比較的整然としていて、人々も温和な雰囲気を漂わせている。第一印象は悪くない。


今夜はムババネに宿泊するつもりだったので歩き方に載っているCity InnとAll Ways Mbabane Backpackersを回ってみるが、2件とも既に廃業していた。ロンプラに載っているムババネのホテルはどこも町から遠く、他に街中のホテルのアテはなかったので、国立博物館やスワジ文化村があるエズルウィニ渓谷(Ezuluwini Valley)までそのまま行ってしまうことにした。

ムババネからエズルウィニまではタクシーで2~30分ほど。
エズルウィニ渓谷はカジノを併設した高級ホテルが集まり、いわばスワジランドのリゾート産業の中心地である。道路もきれいに整備されていて、道路沿いには近代的なショッピングセンターやATMを時折見かける。アフリカの貧しい小国という一般的なイメージよりはだいぶアップグレードされた仕様である。

ホテルは、歩き方にもロンプラにも載っていたマンテンガ・ロッジにした。
街道から坂道を登った山の中腹にある。部屋は水回りが若干シャビーだが、レストランのテラスからの、周囲の森と美しい山が一望できる景色は素晴らしい。プールとその周りの木々もまるでリゾートのような風情だ(もっともプールの水は何年も替えられていないような半透明の青緑色で、水底には同系色のカエルが沈んでいたが・・・)。




夕方、ATMで現金を下ろすために近くのGables Shopping Centreに行く。ホテルは丘の中腹にあるが、ショッピングセンターまでは徒歩15分くらい。この界隈は完全に車社会で基本的にどこ行くのも車が必要なので、徒歩圏内に買い物ができるところがあるのは助かる。

街道の方へと下りていくと、道沿いには意外なほどの豪邸が建ち並ぶ。
スワジの金持ちが住んでいるのか南アの金持ちの別荘なのかは不明だが、アフリカの小国の片田舎でこれほど整備された高級住宅街を見かけるとは思わなかった。今まで世界中を旅して、特にこの15年程の新興国の躍進や経済のグローバル化を目の当たりにしてきて、途上国=貧しいといったステレオタイプからは自由なつもりだったが、それでも世界は想像を超えて日々変化しているのだろう。

ショッピングセンターはやはり近代的で、立派なスーパーの他にレストランやバー、サムスンの展示ブースやシネコンまで入っている。もはや下手な日本の田舎よりもよほど近代的で、小汚い看板がない分景観もすっきりしている。こういうのを見るにつけ、国境が原因の富の偏在がグローバル化に伴って年々解消し、一方で各国国内の階級格差が拡大しているのを否が応にも感じざるを得ない。今では平均的な先進国の国民より裕福なアフリカ人は掃いて捨てるほどいるのである。

ちなみに世銀の統計によると、2012年のスワジランドの一人当たりGDPは3,044ドルで、アフリカ全体では平均以上であるものの、南ア(7,508ドル)の半分以下であり、国全体は決して裕福ではない。それでも日本人以上に物質的にも豊かな暮らしをしている人間は大勢いるのだ。

もちろん目に見える近代化の陰で、スワジランドは世界有数のHIV感染率(2011年で全人口の26%)とそれに伴う平均余命の減少、貧困問題、無能な王室等、相当に深刻な問題を抱えているのも事実。一部の者にだけ恩恵をもたらすグローバル化と経済成長、一向に解決されない貧困と国内問題という構図は、多くの第三世界の国々に通底する問題でもある(というか、先進国もここまでドラスティックに顕在化しないだけで、社会の変質の方向は同じだろう。)。


用事を済ませ、夕闇の中家路を急ぐ。
それほど治安が悪くないのか、豪邸も周りにフェンスを巡らせるだけで、南アのように街ごとゲートで囲ったり高電圧を通したりしているわけではない。

ホテルに戻り、レストランのテラスでビールを飲みながら夕日に色づくマッターホルン風の岩山を眺める。このホテルに出張でよく来るという南ア人を話していると、あの岩山(正式にはニョニャネ(Nyonyane)山という。)は実はExecution Rockと呼ばれる王国の伝統的な処刑場で、昔は罪人を頂上まで連れて行って突き落として処刑していたらしい。毎回そんな手間のかかる事をしていたとは俄かには信じられず、儀式的な処刑の場合だけか?と尋ねても、いや、普通にあそこから落として処刑してたんだよ、という。
その事実を知ると、急に風景が陰りを帯びた。


日が沈むとあたりは群青色の暗闇に包まれた。
夕食後(ホテルのレストランは味がよかった)、出かける所もないので、テラスでビールを飲んでのんびりして過ごす。スモーカーだったらさぞタバコがうまいに違いない。禁煙したことを少し残念に思う瞬間である。



部屋に戻り、遅いWifiにつないで今後の旅の計画を練る。
当初の予定ではスワジランドから一旦ヨハネスに戻り、そこから時計回りにVic Falls、ザンビア、マラウィ、モザンビーク島と回って再びヨハネスに戻り、そのままNYに帰るつもりだったが(なんとなくモザンビーク島を最後に持ってきたかったのだ)、ヨハネスに行く回数を減らしたいこと、このままスワジからマプトに行った方が効率的なことから、スワジから直接モザンビークに入り、逆時計回りに回っていくことにした。早速マプト=ナンプラ間の飛行機を予約する。

移動で疲れたので早めに就寝。

スワジランド旅行記:エズルウィニ/マンテンガ
スワジランド旅行記:マンテンガ、ムババネ、エズルウィニ