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美しき青きマラウィ湖
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Lake Malawi at Dusk
ケープマクレアに着いた翌朝、宿のレストランで朝食を食べながら外を眺めていると、ビーチのそこかしこで人々が頭や体に泡を塗りたくって体を洗っている。流れのある川ならともかく、閉じた空間である湖で泡は流さない方がいいだろうに、人々はそんなことを気にするでもなくすぐ脇で食器や服を洗濯していたりする。ここでは水辺は完全に生活の場なのだ。この朝食の食器も湖水で洗ったものかと思うと若干微妙ではあるのだが・・・


マラウィ湖にいる間、基本的に宿のレストランでビールを飲みながらロースクールの論文(コロンビアのLLMは卒業までに25ページ程度以上の論文の提出が必須)の仕上げをしつつ、湖を眺めて過ごした。





テラスから眺めるマラウィ湖の景色は美しく牧歌的だ。
穏やかな水面に浮かぶ緑色の島、沖に浮かぶ雲、行きかうカヌー、水辺で遊ぶ子供達・・・
こういう平和なところにいると、論文のテーマ(Merger AgreementにおけるMAE条項に関する判例と文言の変遷)とか本当にどうでもよくなってくる。

見ていると泳ぎたくなってくるが、住血吸虫がいるので水に入れないのが残念でならない。
もっとも湖周辺の宿は大抵シャワーも湖水を使っているので、水に入らなくてもある程度のリスクにさらされている点は変わりないのだが。

ちなみにマラウィ湖は世界で9番目(アフリカで3番目)とかなり大きな湖で、琵琶湖の4-50倍ある。
ケープマクレアを含む湖南部は国立公園に指定され、この一帯(湖の面積の0.3%)のみが世界遺産に指定されている。生態系の独自性と多様性が主な価値らしい。
生活排水とか流れ込みまくりだが大丈夫なんだろうか。


ケープ・マクレアは鄙びていて、とてもひっそりとした静かな村だ。一応観光地なのにあまり人がすれていない。
強く照り付ける太陽がブーゲンビリアの花を鮮やかに輝かせ、子供たちは巨きなバオバブの根元で遊んでいる。
男たちはアフリカの田舎の例に漏れず軒先で居眠りしているかぼんやりしている。




カヌーをチャーターして沖に浮かぶ島にも行ってみた。
人の体がやっと入るくらいの幅で、座り方を見つけるのが難しい。船頭と一緒に手で沖へと漕ぎ出していく。

湖上の眺めは素晴らしい。
はるか向こうに遠雷が聞こえそうな積乱雲が浮かぶ。
群青色の水面を生暖かい風が撫で、かすかなさざ波をたてて行く。どこかへ向かうカヌーが遠くを通り過ぎていく。
風と水の音だけが時折静寂を破る。


島は厚い緑の森に覆われ、岸は岩場になっていた。水は思ったよりも澄んでいる。
色鮮やかな魚が泳ぎ回り、船頭が餌を投げ入れると、ものすごい勢いで水を撥ねながら集まってくる。
淡水魚でも熱帯の魚はカラフルなんだな、と妙な所に感心。
青味がかった魚が多く、涼しげで可愛らしい。青い魚はアフリカン・シクリッド(スズキ目)で、マラウィ湖はこのシクリッドの固有種が多いことで有名らしい。


この島には魚だけでなくワシ(African Fish Eagle、サンショクウミワシ)も棲んでいる。
あまり興味はなかったのだが、船頭がワシのエサやりのために魚を買ってきたというので見せてもらうことにした。

島の上空を飛んでいるワシを見つけると、船頭はおもむろに小魚を袋から取り出してカヌーから10mほど離れた水面に放り投げ、ワシを呼び寄せるための音をたてる。目ざとくそれを見つけたワシが魚を狙ってグライダーのように滑空し、両足で水面に浮かぶ魚を掴むと、そのまま止まることなく飛翔して去っていく。
一連の動きは実に滑らかで優雅で、まるでNHKやディスカバリーチャンネルの生物番組のようで見ごたえがあった。一見の価値あり。


夕方になると、人々はまた水辺へと戻ってくる。
暮れてゆく空の下、やはり体を洗い、洗濯と洗物をしている。
なんだかよその家庭の生活サイクルが見えるようで面白い。
湖の西の山々に太陽が姿を隠すと、空は燃えるような夕焼けに満たされる。


3泊の滞在中結局ほとんど湖を眺めているだけだったが、見ているだけで楽しく飽きることはなかった。
平和で静かで風光明媚で、マラウィ随一の人気スポットというのも納得。今回の旅行で最も気に入った場所の一つ。
しばらく腰を落ち着けて逗留し、のんびり読書したり考え事したりするのには絶好の場所だ。

マラウィ旅行記:ケープマクレアとマラウィ湖観光