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シビアな天空の王国
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ブルームフォンテーンからなだらかな起伏の草原をミニバンで3時間ほど走ると南ア・レソト国境のマセルブリッジに到着した。
橋がかかるカレドン川は茶色の濁流で、周囲には長閑な牧草地が広がっている。
橋自体はno man's landになっていて、川の両岸にそれぞれ国境ポストがあり、レソトから南アへの入国には長い行列ができていた。レソトのイミグレの建物の"Maseru Bridge"のサインは文字が半分脱落していて、結構なダメ国家の予感である。


レソトは周囲を南アに囲まれた飛地状の王国で、最低標高地点が1400mと世界で最も高いことからキャッチコピーは「天空の王国」("Kingdom in the Sky")。
ちなみにWikiのランキングによると「最低標高地点」ランキングでは上位5カ国中4カ国がアフリカ勢で、台地(アフリカと中央アジア勢)がヒマラヤなどのメジャーな山国に圧勝である。
それにしても、最高標高でも平均標高でもなく「最低標高地点」というなんとも反応に困る数字を持ち出してくるあたり、他にセールスポイントが無い事を雄弁に物語っているような気もする。

国境から乗合タクシーでマセルに行くが、道中「ニーハオ」とか言って絡んでくる奴多数。
ホテルを探すものの、マセルは非常にホテルの数も種類も少なく、今日の予算($100以内)だと選択肢は限られる。
最初に入ったVictoria Hotelは受付係が信じがたいほどのア●で話が通じなかった(Wifiやパスワードという概念を知らない等々)ので、結局ロンプラにも載ってるLancer's Innに宿泊。ここも受付は感じ悪いし、超狭いシングルルームで$70する上、バスルームと部屋の間が衝立みたいになってるだけで壁がない。東横イン(泊ったことないが)の方がまだ安くてマシなのではないか。レソトの物価を考えると噴飯ものの価格設定だ。
この時点でレソトの印象は最悪である。


翌朝、マセルの街を歩いた。
当初の予定では「天空の王国」らしい景色を見るためにマレアレアに行くはずだったのだが、天気も悪くレソトに対するテンションも下がり切っていたので、マセルだけ見てさっさと南アに戻ることにしたのだ。

街は曇り空の上に黒人の野良人が多数たむろしていて、ひどく活気が無い。
ボロ小屋のような店が並ぶマーケットは非常に惨めな佇まいで、街の至る所にあるHIVの啓蒙ポスターや看板が物悲しい。中華系の移民が経営する店を時折みかけるが、きっと対中感情がよくないのだろう(これはレソトに限ったことではないが)、こちらを中国人と思って絡んで来る黒人多数。ひどい町である。


その後近代的なスーパーに行ったり、天気が持ち直してきたこともあって若干気分も持ち直すが、いかんせん第一印象が悪すぎた。田舎に行けば多分美しい自然があるんだろうが、今回の旅行でブルンジ以上に二度と来たくない国にランクインしてしまった。


正直一刻も早く南アに戻りたかったが、南アの入国審査は炎天下の中数百メートルの長蛇の列。昔行ったサンディエゴ=ティファナ間のアメリカ・メキシコ国境の、アメリカへ入国するための長い長い行列を思い出してしまう。こっちの「国境の南」は無気力な野良人が絡んで来るダメ国家で、メキシコと比べるのも失礼だろうが。

結局レソトは本当に行っただけで終わってしまった。マレアレアやドラケンスバーグに行けば大分印象も変わったんだろうが、それすらする気になれず。
旅をしていればこんな日もある。

レソト旅行記:マセル