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ガウディのバルセロナ
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La Sagrada Familia, Barcelona

グラナダの次に訪れたのはスペインでの最後の目的地バルセロナ。
バルセロナを訪れるのは初めて。空港からバスに乗り、ホテルの近くのカタルーニャ広場まで行く。
町の風景が心なしかマドリードより垢抜けて見える。

Hotel El Palace
The lounge
スペインで最後なので若干高級な所を、と選んだホテルはHotel El Palaceというなんとも特徴のない名前。
以前はリッツだったらしく、タクシーでも「元リッツ」と言った方が通りがいい。
ロビーやラウンジはヨーロッパのクラシックホテルらしく豪華で綺麗。部屋のインテリアはやや古臭い感じだったが、バスルームは新しく広めでかなり充実していた。コンシアージュやベルのサービスも行き届いていて割とグッドバリュー。

pinchos at La Txapela 
夕食をとりにカタルーニャ広場まで歩き、広場に面したLa Txapelaというピンチョスの店に入った。
オープンカフェとファミレスを混ぜたような店構えだが、とても繁盛していて味のレベルは非常に高い。
スペインといえば閉店したエル・ブジをはじめ、レストラン・ランキングの上位に多くの店が登場する美食の大国だが(今ではフランス等よりよほど勢いがあるだろう)、こういう草の根レベルも含めた味の質の高さがあってこそなのだろう。



翌朝早起きしてサグラダ・ファミリアに行くと、すでに入口前には長蛇の列ができていた。
いまだに進められている工事の囲いに沿って列に並ぶ。朝のバルセロナは日陰だと寒いくらいだ。

ちなみに現代建築を愛する私は、実はガウディの建築のゴテゴテした造形や土色の外観が苦手だった。
そもそもガウディは近現代の建築家の中ではかなり異質な存在で、ミースやコルビュジエのように後世につながる様式の先駆者というより、独自の個性的なスタイルを貫いた芸術家という位置付け。いわばモダニズムへの流れの中で花開いた、狂い咲きの大輪の華とでもいうような。その点でも現代建築愛好家としてはあまり興味を感じなかったのでもある。

要はあまり期待していなかったのだが、この期待の不存在はいい意味で裏切られた。

the passion façade
ditto
入場口がある西側のファサードは「受難のファサード」(The Passion Facade)と呼ばれている(passionと言っても情熱ではなく、昔メル・ギブソンが撮った映画のタイトルと同じキリストの受難を意味するtheのつく方のpassion)。

直線的なキリストや使徒の像があり、青銅製のドアには聖書の字句が浮き彫りにされている。
塔の外観の古めかしさからは意外なほど現代的な意匠。

the nave
pillars and the nave
最も予想を裏切られたのは内部空間の豊穣さと軽やかさだ。これほど光が溢れて美しい教会は今まで見たことがない。
広い窓からは光が射し込み、身廊を埋める柱や天井に反射して空洞を光で満たす。
ステンドグラスを通った光は外装とは一転して明るいオフホワイトの壁に色彩を点じる。
列柱や天井の装飾も喧しいまでに個性的で作りこまれているが、完成度が高いためだろうか不思議と統一感があり、この空間の美しさを際立たせている。こんなデザインをできる人間がいたこと自体が驚きだし、この聖堂は確かに名声に違わず世界で最も美しい建物の一つだろう。

stained glasses
a cross under a golden umbrella
skylight above the altar
ceiling
エレベーターで塔の一つに昇った。
上空からは建設途中の他の塔と、バルセロナの街並みが素晴らしい。
新市街に見える銃弾のような形をしたビルはジャン・ヌーヴェル設計らしい。あまりらしくない、というかロンドンのガーキンや新宿のモード学園のコクーンタワーに似てる。ああいう形は世界的に流行りなのだろうか。

a spiral staircase

a view from a tower; a Gherkin like building on the right
a tower and a view
Sagrada Familia
教会を外から見てみるとやはりそこまで好みではない。 観光写真では塔が並ぶ外観が取り上げられることが多いが、サグラダ・ファミリアの魅力はひとえに内部空間の美しさにあると思う。黒々とした外観も、中に入った時の意外性を演出する装置として機能している面もあるのだろうけれども。


ランチの後、ランブラス通りの近くにあるグエル邸(Palau Güell)へ。
これもガウディが設計した個人の邸宅で、外観・内装ともに重厚でクラシカルなデザインで、アトリウムや階段の構造などは忍者屋敷みたいで奇抜だが、そこまで突飛な箇所は多くない。ダイニング・ルームなんかは普通のスペインの邸宅、といった感じ。

しかしそこはガウディ、ただでは済まさず、屋上にキノコ状のオブジェが林立していた。
内部の重厚なインテリアと脈絡なし。自由である。

Guell Palace
the dining room
the atrium
fungi like sculptures on the roof



グエル邸を見終わった後、ランブラス通りと旧市街を歩いた。
このあたりはカフェや店も多く、街並みは(観光客が多い点を除いては)「Vicky, Christina, Barcelona」の世界。旧市街は別名「ゴシック地区」の名のとおり、地中海沿いにしては意外なほど暗い色合いのゴシック建築が多かった。それでも街並みは全体的に爽やかで垢抜けていて、マドリードより遥かに魅力的だ。

Calle La Rambla
La Cure Groumande
Barrio Gotico
An antique shop


その後、更に精力的にカサ・ミラとカサ・バトリョを見にいった。
ガウディが苦手などどこへやら。

カサ・ミラは現役のアパートなのでツアーじゃないと入れず、外観だけ。1戸あたり300㎡らしく、日本だと超がつく高級マンションのサイズだが、こちらはやはりスペースにゆとりがあるんだろう。

Casa Milà
カサ・バトリョもガウディ設計の個人邸宅。
個人住宅としてはかなり大規模で5階建てでエレベーターまである。当時こんなぶっ飛んだデザインでこれほどの邸宅を建ててしまうんだから、バトリョ氏はさぞかし裕福で好事家だったに違いない。グエル邸に比べると重厚さは影を潜め、流線型とパステルカラーの色彩を多用した軽やかなデザイン。
屋上にはお約束のキノコもあり、住んでみたくはないけど見ていて楽しい建物だ。

Casa Batlló
staircase to the first floor
colorful windows
a sun-flooded room
a corridor
the loft

ホテルに戻った後、歩きつかれた身に活を入れてスペイン最後の夕食をとりにレイアール広場に向かう。ここは観光客向けのレストランのテラス席が広場を埋め尽くしている(観光客向けと言っても味のレベルはそこそこ高い)。

スペイン滞在は1週間足らずでポルトガルほどのんびりと過ごせたわけではなかったが、メシも旨く、見所も色々押さえてなかなか充実した旅だった。相方はここから日本に帰り、私はブカレストに飛んでルーマニアとブルガリアを周る予定。こんな自由な夏休みは学生時代以来だな、ホント。

dusk is approaching
bubbles
Plaça Reial