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サンブラス諸島
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San Blas Islands, Panama

サンブラス諸島はパナマからコロンビアの沖に点在する350程の島々で構成され、透明度の高い海と、原住民のクナ族の文化で知られる。特にその美しい海は「カリブの宝石」とも形容される、らしい。また、コロンビア・パナマ国境は陸路で超えることはできないが、サンブラス諸島経由の海路での越境は可能なので、意地でも飛行機を使いたくないバックパッカーにとっては定番のルートでもある。

◆◆◆

サンブラス諸島へのアクセスはなかなか大変だ。
パナマシティから行く場合、小型飛行機でサンブラス諸島の中心にあるポルベニール(El Porvenir)島に行き、そこから予約してあるリゾートの島にボートで行くのが一般的(なお、この小型飛行機は時々落ちるという)。

しかし、今回飛行機をAir Panamaのサイトで予約しようとしたらウェブ上では予約ができず、電話もつながらない。旅行会社に問い合わせると、現在ポルベニール島の空港が閉鎖されているという。理由を聞いても説明は要領を得ない。仕方がないので他に空港のあるCorazon de Jesusへのフライトを調べてみるが、Corazon de Jesusはサンブラス諸島の外れの方にあり、この近くにある宿の情報がネット上では全く見つからない。旅行会社も知らないという。

そんな中、サンブラスに行くことを半分諦めかけていたが、Panama Travel Limitedという旅行会社に電話したら、陸路で近くの港まで行き、そこからボートでサンブラス諸島に行くツアーがあるという。これなら飛行機が落ちる心配もないし、二つ返事で乗ることにした。ツアーは人気で、唯一空きがあったのは1泊2日の日程($160)のみ。短いが止むを得ない。


夜明け前に旅行会社のSUVがホテルまでピックアップに来る。
まだ暗い街の高層ビルの間を抜けて車は走って行く。ここからボートに乗る場所までは2~3時間の距離だ。


船着き場に着くと、意外と大勢の観光客がボートを待っていた。
密林に囲まれた場所で、待っている間ひっきりなしにブヨのような小虫がまとまりついて来る。
ボートに乗って川を下りていくと周りはジャングルで、リアルジャングル・クルーズである。


海に出るとすぐに小さな島があちこちに見え始め、原住民のクナ族達の船が沢山行き交っている。島々は意外なほど沿岸から近く、クナ族の生活も地産地消型ではなく、本土によく買い出しに行くらしい。


クナ族達が住む島には掘立て小屋のような簡素な家が並び、パナマシティの高層ビル街と同じ国にあるとは思えないほどプリミティブだ。海の色は暗く、明らかに生活排水は垂れ流しなので、本当にビーチがきれいなのか若干不安が募る。


地元民の住む島を離れると、急に海の透明度が増した。
絵に描いたような南の島が現れては消える。中には椰子の木が1本生えているだけの漫画のような島もある。
深く埋もれている少年心をくすぐる景色で、自然と気分が高揚する。


滞在するKuanidup島は、直径僅か100メートルほどの小さな島だった。
海はどこまでも青く透明で、椰子の木にハンモックがぶら下がり、まさに楽園のような絵だ。
客室は8部屋のみで、客も少ない。


ビーチは本当に素晴らしい。透明度で言えば、多分これまでアメリカ大陸・カリブ海で見た中で最高だろう。
波も殆どなく遠浅で、波打ち際で寝そべっているといつまででも過ごせてしまえそうだ。
遠くに本土のなだらかな起伏が見える。それにしても、クナ族の生活排水はどこに流れていくのだろうか。


すぐ近くには別の島があり、その間にちょっと古めかしいヨットが停泊している。
ヨットに乗っていたフランス人の女の子が時々島まで泳いで来ていたのだが、船を借りてこのあたりを回っているとのこと。日本人ではなかなか無いバカンスの過ごし方だが、船の操縦が出来れば優雅で楽しそう。ちなみに、彼女が船から来る度に殆ど濡れていなかったり、物を持っていたりするので、どうやって泳いでいるのか皆不思議がっていた。


モルジブと決定的に違うのは宿だ。
豪華な水上コテージや洗練されたレストラン、インフィニティプールやジャクージなどは望むべくもなく、部屋には電気や水道すらなく、砂の上にベッドを置いただけ。もちろん下水もないので共同トイレは海水で流す(海に直接流しているわけではないが)。夜、消灯後は真っ暗な中で用を足さなければならない。シャワーも当然海水。

一応発電機はあるので冷えたビールを飲むことはできるが、食事はお粗末。これで1泊$100以上するんだからひどい話である。いい所なのだが、宿泊施設を考えると1泊で十分な気もしてくる。

パナマシティからも近く、観光資源としては最高なので、交通とインフラを整備すればカリブ海のモルジブやタヒチになることも夢じゃないと思う。島のサイズが小さすぎるのがネックだが、1島あたり1軒、4BRくらいのプール付のビラを建てて、プライベート・アイランドとして1泊数千ドル~で売り出せば、アメリカの金持ちに人気が出そうな気がする。


夕方、イスラ・ペロ(Isla Perro)に行く。「犬の島」という意味だが、犬はいない。
美しい海が有名な所で、ビーチはKuanidupと大体同じレベル。ここは島のすぐ近くに沈没船があって、シュノーケルを借りて見に行くができる。錆びて真っ黒になった船の中を、鮮やかな熱帯魚の群れが泳ぐ。


雲間から射す夕陽が島々を照らす。
言葉にならない。


夜のKuanidupは満月に照らされ、灯りが要らないほど明るかった。

サンブラスのビーチは間違いなくカリブ海でトップクラスで、開発さえ行われれば最高のリゾートになるのは確実だが、今のようにひっそりとしたrusticな雰囲気のままでいて欲しい気もする。あの様子では当分は変わらなさそうなので、杞憂かもしれないが。

パナマ旅行記・サンブラス諸島旅行記