Newer Post Newer Post Older Post Older Post

NY Bar総括
, :

,

7月に受験したNY Barの結果を知らせるメールが届いた。予定より早めの発表だったが、なんとか合格していた模様。ブログの趣旨からは離れるが、意外と大変な試験だったので若干の感想を。


難易度

合格率
一般に受け止められている程合格率は高くない。
2013年7月の試験の全体合格率は69%とそこそこだが、内訳を見るとJDの86%に対しLLM等のForeign Educatedは37%とJDの半分以下。この差は、①語学力(JD=英語ネイティブ、LLM=原則非ネイティブ)と②これまでの勉強量(JD=3年間基礎法をみっちり勉強、LLM=9ヶ月間だけ主に基礎法以外を勉強)の差に集約される。

なお、2012年はForeign Educated全体の合格率36%に対して日本人の合格率は42.7%。なので、日本人だけ合格率が特に高いという事はない。もっとも職場の同僚や知人に限れば7~9割程度合格しているので、日本人受験者の中でも相当バラつきはあるのだろう。

内容面
広く浅めの出題で、Essay・MBEともに基本的事項が多くて捻りも少なく、日本の旧司法試験と比較すると難易度はかなり低め。

総合すると、試験内容自体は難しくないものの、準備期間の短さ・言葉のハンデ等の不利な条件が重なることで、日本人の合格率は低めに留まっているといったところだろう。



時間が足りない

NY Barは時間との勝負なので、なるべく早く勉強を開始すべき。
不合格となるのも、能力ではなく準備不足が原因の場合が大半。

Barbriのビデオ講義開始(5月下旬~)から勉強を始めるのが一般的だが、この場合2ヶ月で20科目以上をカバーすることになり、例えば手形小切手法を1日で終わらせる等の無茶なペースになるので、万全を期すなら春先あたりから準備を始めるべし。

また、Barbri講義に合わせて勉強を始める場合、BarbriのPaced Programについて行くのを推奨。こなすのは結構大変だが、遅れると直前期and/or合格発表で泣きを見ることになる(筆者の場合5~6月は遊んでばかりいて、7月になってからMBEとEssayに着手するというビハインドっぷりだったため、試験前2週間は地獄をみることになった。)


教材

インプット用(全体):
主な選択肢として、①日本人ノート、②その他外国人ノート・Outline、③BarbriのCMR(Conviser Mini Review)、④Barbriのハンドアウトがある。どの教材を使っても受かる人は受かるので要は好みの問題。

私は結局日本人ノートと他国のLLMノートをメインに、適宜他の教材で補完した。
各種ノート等のWordファイルの教材はインデントや書式が気になるタイプの人は形式修正に時間をかけてしまうリスクがあるので注意。あと当然法改正やBarbriの講師の変更はあるので、できる限り最新版を入手すべき。
なお、個人的には③CMRは単体で使うには説明不足で分かりにくい、④Barbriハンドアウトは講義を聴いて埋めるのが面倒&書式がスカスカで読みにくいと思った。

上記以外に、ノートを読んでいるだけでは要件や規範が覚えにくかったので、科目によっては単語帳的な小テストを自作したりした。時間がない中で手を動かす作業に時間を割くのはリスキーだが、それなりに頭の整理にはなったと思う。

インプット用(Essay):
よく出回っている日本人教材として、①論点ブロック、②Essay回答を論証パターン化したEssay Outlineがあるが、論点ブロックは素晴らしい完成度・網羅性で、量は多いものの必要な論点を概ねカバーしており、入手して一度は全体に目を通しておくことを勧める。②は内容も古くなっており、個人的にはそれほど有用ではないと感じた。

Barbri講義:
効率性を求めるなら聞かなくてもいいと思う。
分かりやすい講師が多いが、中には無駄話や全く役に立たない語呂合わせの歌などを披露する講師もおり、時間優先なら紙で勉強したほうが効率的。

私は自分のサボりがちな性格を十分自覚していたので、6月まではBarbriの講義に出席することを自分に課した(それ以外はほとんど何もしなかったのだが)。結果的にはこのおかげで最低ラインを維持できたので、サボり気味の人はペースメーカーとして使う意味はあるだろう。なお、私も後半のマイナー科目は時間が勿体無かったので講義は聴かなかった。また、初見の科目だと講義を聴くとイメージを持ちやすい。

なお、講義を聴きながらPCでノートに加筆修正する場合、そちらに気を取られて講義内容自体をその場で理解する余裕がないことも往々にしてあるので、紙の教材だけで臨むのも一つの方策だろう。


MBE

配点が高く(40%)、Essayが不得意な日本人はここで得点を稼ぐのがセオリーとされる。

問題演習:
ノートやOutlineでのインプット→問題演習をひたすら繰り返すのが王道。
BarbriのMPQ1のSet1~4までを回すのがBottom Lineとされ、これで合格する人も多いので、時間がなければこれで十分と思う。なお、MBEで高得点を目指す人、英語やMultipleが苦手な人はSet 5以降やMPQ 2、他の予備校の教材も解いてもいいかもしれない。

私が最終的に解いたのは各科目25問の演習問題(150問)、MPQ1 Set 1~4(432問×2周)、Barbri模試(200問)、最後のHalf Dayの演習問題(100問)(合計882問、延べ1314問)。おそらくかなり少な目だが、7月に入ってから始めたので時間的にこれが限界だった。1周目の得点率は調子がいいと7~8割だったが、明け方に寝ぼけながら解くと5割を切ることもあり、ボラティリティが高くてなかなか精神的にもきついものがあった。

スケジュール:
直前期はEssayに時間をとられる人が多いが、MBEの勘を鈍らせないためにも毎日MBEを解く時間を作っておいたほうがいい。短期間で詰め込んだものは放置するとすぐに抜けてしまう。

試験中の時間配分:
JDのスピードが基準なので多くの日本人にとっては時間が足りず、意識的にペースを刻んでいく必要がある。
100問=180分で1セットなので1問=1分48秒なのだが、実際は後半は疲労でペースが落ちることが多いので50問=80分くらいで折り返すのを目安にした方がいい。少なくとも18問=30分のペースは維持したい。いずれにせよ中途半端な数字なので、試験中に混乱しないように区切りの問題数ごとの目標到達タイムを予め想定しておくべき。

ちなみに、Barbri模試や問題集ではよく時間切れになっていたのでかなり不安だったのだが、本試験では想定以上のハイペースで解くことができた。意識的にスピードを上げたのも一因だが、一般に本試験の方が模試より短時間で解けるものらしい。なので、模試・問題集等で多少時間が足りなくてもそれほど悲観する必要はないかも。

Barbri模試:
NYだと本試験と同じJavits Centerで行われる。
受けた時点(7月9日)ではまだMPQ1のSet 1も終わってなかい段階だったので全く時間が足りず、200問中なんと20問くらい残してしまった。結果も110点で全体のMedian(112点)を下回り、さすがに焦った。

本試験:
模試の経験からとにかく解き終わることを優先したので、時間的には午前・午後ともに見直しに15分くらい充てる余裕があった。しかし、午前は割と快調だったものの、午後は予想以上に初見の論点ばかりで2択から先が絞れない問題が多く、総じて感触は今ひとつだった。結果は平均よりちょっと上くらいだった模様。


NY Multiple Choice

科目数が異常に多い上に、NY Distinctionを意識的に覚えなければならず面倒くさい。
しかも配点は10%なので合否への影響が小さく、受験政策上あまり深入りすべきでないというのが通説。(なお、1問あたりの配点はMBEと同じだが時間配分は1問=1分12秒とMBEより短い。)

筆者はBarbri教材の演習問題のうち重要そうな科目だけ選んで少し解いてみたところ、正答率5~6割かつ時間も足りなかったが、勉強しても効果が薄そうだったので、結局それ以上は何もしなかった。NYMCにかけた時間は合計3~4時間のみ。

本試験は自信を持って答えられる問題がほとんどなかったので時間優先でさっさと解き、45分くらいで片付けたが、一番出来が悪いと感じたパートである。


Essay

40%の配点があり、MBEと並ぶ主戦場である。

問題演習:
BarbriのNY Test VolumeのEssayの問題のうち、Paced Programで指定されたものをこなすのが基本。
日本人の間で出回ってるEssay Outlineもあるが、問題の問いの部分が省略されている、古くて今の問題番号と合っていない等使いにくかった。

筆者は時間がなかったので、実際に答案を書いたのは1問のみで、それ以外は1問15分程度で問題を読み答案構成し、模範解答を読むだけだったが、一応Paced Program指定の問題は全て目を通した。もっとも、後半は答案構成する時間もなかったので頭の中でIRACを思い浮かべるだけだったが・・・

インプット:
日本人作成の論点ブロックが完成度が高く、メインの教材以外はこれだけ回しておけば必要な論点は概ねカバーできる。
筆者は当初論点ブロックは使っていなかったのだが、試験直前に目を通してみたらスムーズに頭に入ってきたので、急遽方針を変えて重要そうな論点に絞って一通り目を通した(300ページくらいあるのでこれだけでも半日仕事だったが)。結果的に本番ではこれで覚えた論点が多数出たのでかなり効果的だったと思う。

Ruleの創作:
答案では愚直にIRACを遵守し、Ruleを知らなければ臆さずにでっち上げるべき。
日本の司法試験との最大の相違点だと思うが、NY BarではRuleを完全に間違えても他の部分(Issue、Application、Conclusion)に配点があるのでそこでかなり点数が拾える。たとえば、筆者が唯一採点してもらったEssayで全くRuleが分からなかったので、全小問でRuleを創作し、結論も全て不正解だったのだが、評価は4点だった(標準的な合格点は5点)。Barbriの採点も怪しいのだが、日本の司法試験だとほぼ点は入らないだろう。何よりRuleを覚えるプレッシャーから解放されるので精神衛生上いい。
あと、加点方式なので気付いた要素(論点でも使えそうな事実でも)は、時間不足に陥らない・答案全体が破綻しない範囲で可能な限り拾うべき。

本試験:
論点ブロックやノートの暗記のお陰で論点はほぼ迷うことなく、一部知らないRuleもあったものの、知っているRuleはかなり細かいところまで書けたと思う。実際どの程度の評価だったのかは分からないが・・・。


MPT

事前準備:
結局手が回らず、BarbriのMPT教材のIntroductionを直前に読んだだけで、一問も解くことなく本番を迎えた。あまり準備が意味をなさない内容だし、配点も10%なので最低限の準備でいいと思うが、形式面くらいは押さえておいた方がいいと思う。

本試験:
一日目午後をMPTから解き始めたところ、自分の得意分野(契約のマークアップ)だったので大展開してしまい、予定の時間配分を超過してEssayに皺寄せが来たが、内容的には割と満足の行く出来だった。
但し、演習ゼロが祟って形式面のミス(メモの頭書)や迷い(修正文言の記載方法)が生じたのは事実。ちなみに修正履歴機能や文書比較ソフトもない中でどうやって修正内容を表現すべきだったのかはいまだに謎。


試験当日

服装:
筆者はJavits Centerで受験したが、外は暑いのに会場はとにかく寒い!真冬の装備で臨むべし。
特に2日目はPCの発熱がないので1日目以上に寒い。

教材・カバンを持っていくか:
試験室内には教材や鞄は持込禁止なので、もし鞄を持っていった場合はクロークに預けることになる。
クロークが長蛇の列という噂を聞いていたので1日目は持込可能な透明ビニール袋だけ持参したが、クロークが意外と空いていたので2日目は教材と鞄も持って行くことにした。
他の会場は分からないし年によって違うかもしれないが、朝の入室前や昼休みも勉強したいのなら教材と鞄は持って行ってもいいと思う。

ラップトップ受験:
ロースクールの試験でNY Barと同じ試験ソフトを使って特に問題なかったので、日本語OSのPC(動作保証対象外)で受験した。

なお、試験ソフトを使用中はカット&ペーストに注意。
長文をカットする場合は警告文が出るのだが、これをOKしてカット&ペーストを実行すると異常にソフトの動作が遅くなった。クリップボード上のデータが大きくなってメモリを食うのだろうか?ちなみに私のPCはメモリ8GBの標準的なスペックである。
どのくらい遅くなるかというと、タイプした3秒後にやっと文字が表示されるレベル。
こうなってしまったらまともにタイプできない。最後のEssayの最中だったからなんとか乗り切ったが、早い時間にトラブルが起きてたら時間不足で落ちてたかもしれない。
ロースクールの試験でも同じ症状が出たことがあるので、NY Bar特有というよりソフト自体の問題かもしれない。

本試験直後の感触:
①MBEの感触がイマイチで出来が読めなかったこと、②NYMCが壊滅的っぽかったこと、③MPTで微妙に形式ミスをしていて、また内容に自信はあったが採点されたことがなくレベル感が掴めなかったこと、④Essayは好感触だったが所詮非ネイティブなので高得点は期待できないこと等から、受験後の主観的な合否予想は半々といったところだった。